仕掛け
本作には「遊び」とも言える仕掛けが、随所に散りばめられている。これは、喜劇作家・脚本家三谷幸喜によるところがある。; アヴァンタイトル
: 番組の冒頭、黒い背景をバックに古畑が立ち、その回のキーワードや関連する話を披露する。これで視聴者がどこに注目すべきかのヒントが示される。
: 第11回「さよなら、DJ」を皮切りに、第21回・第25回・第38回・第39回など、シリーズを通して語られる小話。最後のくだりになると、なんらかの理由によって必ず中断されてしまうため、いまだに古畑や視聴者にオチは知らされないまま(三谷幸喜によると、オチは用意されているとの言)である。なお、この小話は『王様のレストラン』などの他の三谷作品にもしばしば登場する。第39回ではスペイン語で途中まで語られていた。詳細については、「赤い洗面器の男」を参照。
: 毎回登場する犯人をはじめとして、登場人物の名前は既存の推理小説の登場人物や実在する人物の名前をもじったものが多い。マニアになると、これを探すのも楽しみのひとつとなっている。三谷はNHK大河ドラマ『新選組!』を手がけた際述べたように、日本史マニアであり、歴史上の人物から登場人物の名前を設定することが度々ある。『王様のレストラン』では、主要登場人物のほとんどを歴史上の人物から引用している。また三谷は映画マニアとしても知られ、前述の『王様−』でも、映画監督のデュビビエや、店名に彼の代表作『ベル・エキップ』(日本邦題『我らの仲間』)を引用したりもしている。
: 名前の他にも、古畑の誕生日がホームズと同じ、第12回「最後のあいさつ」はシャーロック・ホームズ|ホームズ作品のタイトル「最後の挨拶」に由来するなど、設定上でも遊びが随所に見られる。
: 「古畑任三郎」という名前は、東京都世田谷区、国道246号の池尻交差点角にある「古畑病院」の看板と、『森田一義アワー笑っていいとも!|笑っていいとも!』で俳優の時任三郎(ときとう さぶろう)が「よく『とき にんざぶろう』と間違えられる」と語った事に由来する。脚本の三谷がそれぞれを見た際に着想を得、命名した。また時の人、三浦和義の「疑惑の銃弾事件」で名高い「フルハムロード」から一種の洒脱的語感を得たという説もある。
: 本作と同じ三谷幸喜作品とのリンクが頻繁に見られる。中川淳一(鹿賀丈史) は、三谷脚本のドラマ『振り返れば奴がいる』の登場人物であり、中浦たか子(桃井かおり)は三谷の映画初監督作品『ラヂオの時間』に顔を見せ、赤い洗面器の男の話を披露していた。また、南大門昌男(山城新伍)、二葉鳳翆(山口智子)の元には『王様のレストラン』の「ベル・エキップ」から花が贈られ、フェアな殺人者では前にも度々登場したバリトンホテルが舞台となっている。登場作品(第22回、第27回、『バッド・ニュース☆グッド・タイミング』、『THE 有頂天ホテル』)
: 第13回にて、二本松晋(陣内孝則)の出した有名な論理学の問題。古畑は、かなりの短時間でこれを解いている。
: ライオンに捕まってしまった探検家が命乞いをすると、「俺の考えていることを当てられたら、食わずに逃がしてやろう」とライオンが言った。さて、探検家は何と言えば、危機から脱することができるか?という問題。
: この正解は、「あなたは私を食べようと思っていますね?」である。
: ライオンが探検家を食べようと思っていたら、自分の考えていることを当てられたのだから、約束通り食べることができない。もし違うのであれば、ライオンには最初から食べる気が無いのでやはり食べられない。結局、ライオンは自分の言葉に辻褄を合わせるために、探検家を食べられなくなるというパラドックスである。
: 事件の発生順序は、必ずしもテレビで放映される順序と一致しない。この事は、登場人物のささやかな会話や向島音吉巡査の苗字の変遷、SMAP事件の話、小石川ちなみの事後状況、劇中で語られる他の挿話の「解決後」の捜査状況など1話完結のドラマでは珍しく以前放送した話の後日談などが台詞に挟まれることから伺うことができる。VHS・DVDに収録される順序はほぼ、放映順に従っている(VHSはテープの容量の関係上、若干順序が異なる)。
: 『古畑』シリーズでは、意図的に時間軸をずらした構成を取っており、これは企画の石原隆によれば、「視聴者が時間軸を直す楽しみのため」との言。
: 一例(1stシーズン)
:* 第一回・小石川ちなみ(中森明菜)編で「ええ、あの今泉の馬鹿が…ですので幡随院の取調べは明日と言う事で…」幡随院 大(笑福亭鶴瓶、第四回放送)編が時系列では先。
:* 第五回・米沢八段(板東八十助)編でもう一泊しましょうと頼む今泉に「ダメ!新幹線に乗って酢豚弁当食べるのが私の夢なんだから」(中川淳一(鹿賀丈史、第八回)編の中で酢豚弁当を食べようとするシーンがある)と、実時間では8回は5回の直後。
:* 第二回・中村右近(堺 正章)編で今泉を呼ぶ古畑「君…今泉君って言ったっけ?」「はい!今泉慎太郎であります!」とこの時が初対面である(あくまで予想だが)ちなみに三谷幸喜が田村正和に依頼する時、最初に見せた脚本がこの話である。
: 記念すべき、シリーズ第1回の犯人である少女コミック作家の小石川ちなみ(中森明菜)は、第2シーズン以降も語り草となり、ストーリーの随所でその逸話が語られている。
: 彼女は、やり手の弁護士・小清水潔(明石家さんま、第14回の犯人)の弁護により無罪判決を受け、結婚してアトランタで幸せな生活をしているという後日設定がなされている。古畑を結婚式に呼んだり、アメリカに招待したり(第23回はちなみを訪ねた帰途でのエピソードである)と懇意にしており、ほかにも彼女の愛犬・万五郎は古畑の友人・安斎亨(津川雅彦、第32回のゲスト)に預けられ、第1回の事件の舞台となった山荘「ボーズヘッド荘」は古畑が借りて使用している(「消えた古畑任三郎」)。
: そして、完結編である第42回では大野もみじ(松嶋菜々子)によく似た女性として古畑が彼女の半生を語るなど、劇中で語られる古畑との関わりは多い。犯人としては一番待遇が良く、どうして彼女だけ幸せな後日談を与えたのかについては紛れもなく脚本の三谷幸喜が、小石川ちなみを演じた中森明菜の“大ファン”という理由による物である。