概要
「オール讀物」1967年12月号に単発物として『浅草・御厩河岸』が発表され、この時点では連作小説の意図はなかったが、評判が良かったために次月号から同誌の巻末を飾る作品としてシリーズ化された(単行本掲載時にはこの作に限って順番の入れ替えがある)。『鬼平犯科帳』の題名が付されるようになったのは1968年1月号掲載の『唖の十蔵』からである。当時の編集長によれば、野村胡堂の『銭形平次』のように、巻末にあって「オール讀物」の顔となるような長期連載の作品として、『鬼平犯科帳』を考えていたという。テレビ版製作にあたっては原作をドラマ化するのみに限り、小説を使い尽くしたらそこで打切るようにというのが作者の意向であった。1968年には文藝春秋 (出版社)|文藝春秋社から最初の単行本が刊行された。全部で135作で、ほか番外編が1作。このうち5作が長編、残りの130作が短編作品である。未完に終ったのは最後の『誘拐』1作のみで、これは作者急逝のため。現在は文春文庫に収められ、全24巻(新装版)。「鬼の平蔵」と呼ばれる長谷川平蔵の人情味あふれる人間性と悪を許さぬ不屈の意志が見ものである。平蔵は複雑な生い立ちのせいもあり、若い頃は深川近辺で顔を知られるほどの放蕩三昧の日々を送っていた。そうした経験の数々が、火付盗賊改方長官となった平蔵の人間性に深みを持たせており、悪人からは鬼と呼ばれる一方で、部下だけではなく捕らえた盗賊に対しても友人のように接したり父親のような優しさを見せることがあり、単純な勧善懲悪ではない物語の深み、複雑な味わいを感じることが出来る。また食通で知られる筆者ならではの江戸時代におけるグルメ描写があることでも知られる(どちらかというと、季節感を出すために書いているとのこと)。